今回のコラムでは、結構昔からある素材なのに、意外と知られていない知る人ぞ知る「紙糸(paper yarn)」について、製造方法から「紙糸(paper yarn)」で作ったアパレル製品や雑貨について紹介していきたいと思います。
目次
【はじめに:紙糸(paper yarn)とは】
【紙糸(paper yarn)の特徴】
【紙糸(paper yarn)のデメリット】
【おわりに】
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【はじめに:紙入(paper yaen)とは】
「紙糸」は、文字のごとく紙で作った糸です。紙で作った糸と聞くと、切れやすくないか?水に濡れた時に弱くならないか?などの疑問が出てくると思います。しかし、大丈夫です。糸にするために作成された紙だからです。
以下で簡単に製造工程を紹介していきます。
糸にする紙の材料は、マニラ麻・針葉樹などで、それをパルプ化し抄紙(紙にする)しています。抄紙する時のポイントは、材料の繊維を縦方向に揃えながら抄紙することです。これは糸にした時の均一性を持たせ・ムラなどを防ぐためです。紙の薄さは、細い糸を作るには薄くて軽い、太い糸を作るには厚くて重い紙にします。ちなみに10g/㎡〜15g/㎡ぐらいの重さです。この薄さに抄紙できるかが品質のポイントです。
次の工程は、この紙を糸の太さに合わせて、細い糸用には細い巾に、太い糸用には太い巾にテープ状にカットします。これをスリット工程といいます。このスリットテープの巾は、糸の太さに合わせ0.8mm〜2.0mm巾にカットしますが、この巾を何千mもムラを少なくカットするのが技術が必要で、糸の品質を極めるポイントとなります。
次は糸にする最終工程です。細くスリットしたテープに撚りをかけます。イメージとしては、手でこよりを作るような感じです。当然、機械で撚りをかける訳ですが、この工程も熟練技術が必要です。作る糸の種類・太さによってスリットテープを湿らしたり(テープの強度を上げるため)、またポリエステルなどの合成繊維と撚り合わせたりします。
以上のように、抄紙⇨スリット⇨撚糸とも、かなりの技術を要するため、アパレル用の紙糸は現状では日本製でしか対応できません。
【紙糸(paper yarn)の特徴】
1.軽い
紙糸の特徴の一つは軽さです。抄紙した紙には目には見えませんが無数の穴(空隙)が空いています。同じ直径の綿の糸と比較すると重さは約60%ぐらいの軽さです。この軽さを活かし商品化されているものはデニムパンツ・帆布(テント用)・帽子などです。
2.吸水速乾性
紙糸は製造工程からもわかるように紙のスリットテープに撚りをかけたものです。ようするに天然のフィラメントヤーンです。特徴1.の空隙で水分を吸収し、フィラメントなので水分の拡散も早く乾きが早い特徴があります。この吸水速乾性を活かした商品は、一般アパレル以外には、バスマットなどがあります。
3.吸放湿性
先にも説明しましたが紙糸には無数の空隙があります。この空隙によって糸の表面積が広くなり紙糸内の湿気を素早く吸収し、素早く放出します。湿気の多い日本家屋に、床子やふすまが使われているのは紙のこの機能があるためといわれています。この吸放湿性を活かした商品は、インナー・靴下・帽子などがあります。
4.ドライタッチ
紙のスリットテープに撚りをかけているという製造工程のため、糸にシャリ感(ドライタッチ)があります。この構造で、汗をかいた肌へピッタリとひっつくことがなくドライタッチです。このドラッタッチを活かした商品としては、スポーツアパレル特に登山用のシャツなどがあります。
5.エコ(サステナブル)
紙糸の材料の、マニラ麻は伐採しても6年ぐらいで成木になる成長の早い植物です。針葉樹なども、間伐材を使用し環境に配慮した物を使用しています。
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【紙糸(paper yarn)のデメリット】
紙糸のデメリットも解説しておきます。
・価格が高い
製造工程でもお話したように、マニラ麻などの材料は輸入品ですが、抄紙・スリット・撚糸工程はすべて日本のトップレベルの技術の結集です。なのでどうしても価格は高めです。
・風合いが硬く感じる
特徴の4.ドライタッチは裏返すと風合いが硬いということになります。現在は、ポリエステルと撚糸したりで風合いの柔らかい糸ができていますが、ソフトな糸はありません。
【おわりに】
今回も、最後までコラムを読んで頂き有難うございました。
紙糸は、これまでに紹介しましたように、今では珍しい日本製の糸です。デメリットでもある高い糸ですが、非常に特徴がある糸でプロ向きの素材なので、こだわりのあるブランドを展開されている方は活用を検討されては如何でしょうか?
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